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AIエージェント·12分·2026年5月15日

hermes-agent: AIエージェント実装の詰まりどころ

hermes-agentの直近動向を整理。AIエージェントとしての見どころ、実装・運用で気になる点をまとめます。

SPECTRAL BLOG

hermes-agent: AIエージェント実装の詰まりどころ

Spectralの視点で整理したインサイトを、静かに読めるかたちでまとめています。

hermes-agent: AIエージェント実装の詰まりどころ




description: NousResearchが公開したhermes-agentは「The agent that grows with you」を掲げるOSSエージェントフレームワークです。tool use・MCP対応・マルチエージェント構成を軸に、実装上の論点と既存手法との差分を整理します。


meta description: hermes-agentの技術構造とtool use・MCP連携の実装ポイントを解説。AIエージェント構築・設計における既存フレームワークとの差分と、プロダクト適用時の判断材料をまとめます。




何が出たのか


2026年5月15日、NousResearchがGitHubでhermes-agentを公開しました。リポジトリのトピックには ai-agentanthropicchatgptclaude が並んでおり、特定のモデルプロバイダーに縛られないマルチモデル対応のエージェントフレームワークとして設計されています。


キャッチフレーズは「The agent that grows with you」。これは単なるマーケティング文句ではなく、ツール定義やエージェントの役割を後から追加・拡張できる構造を指しています。固定のパイプラインを事前に組み切るのではなく、実運用の中でエージェントの能力を段階的に育てていく設計思想です。


公開直後のHacker NewsやRedditのAI系スレッドでは、MCP(Model Context Protocol)への対応tool useの柔軟な拡張性が注目点として挙がっています。MCPはAnthropicが提唱したプロトコルで、エージェントが外部ツールやデータソースと標準化された形でやり取りするための仕様です。hermes-agentはこのMCPをネイティブにサポートしており、既存のMCPサーバーをそのまま接続できる点が評価されています。


NousResearchはHermes系のファインチューニングモデルで知られており、今回のhermes-agentはそのモデル群と親和性が高い実装になっています。ただし、OpenAIやAnthropicのAPIにも対応しているため、Hermesモデルを使わない構成でも動作します。




技術的に面白い点


tool useの定義とルーティング


hermes-agentのtool useは、関数定義をJSONスキーマで記述し、エージェントが推論の中でどのツールを呼ぶかを自律的に判断する構造です。ここまでは他のフレームワークと大きく変わりませんが、注目すべきはツール定義をランタイム(実行時)に動的に追加できる点です。


多くの既存フレームワークでは、エージェントが使えるツールの一覧は初期化時に確定します。hermes-agentでは、会話の途中や別のエージェントからの委譲時にツールセットを差し替えられる仕組みが用意されており、これが「grows with you」の実装上の根拠の一つになっています。


MCPサーバーとの接続


MCPは「エージェントとツールの間のHTTP的な共通言語」と理解すると分かりやすいです。hermes-agentはMCPクライアントとして動作し、外部のMCPサーバーが提供するツール群をそのまま利用できます。


実装上のメリットは、ツールのロジックをエージェント本体から切り離せることです。たとえば、社内DBへのクエリツールをMCPサーバーとして独立させておけば、エージェント側のコードを変えずにツールの実装を更新できます。マイクロサービス的な分離がエージェントのツール層にも適用できるイメージです。


マルチエージェント構成


hermes-agentはオーケストレーター(指揮役)とサブエージェント(実行役)を分ける構成をサポートしています。オーケストレーターがタスクを分解し、適切なサブエージェントに委譲する形です。各サブエージェントは独立したツールセットとシステムプロンプトを持てるため、「検索専門エージェント」「コード生成専門エージェント」のように役割を分離できます。


この構成では、エージェント間の通信がどのように行われるかが実装の肝になります。hermes-agentでは、エージェント間のメッセージも通常のLLM呼び出しのコンテキストとして扱われるため、デバッグ時にログを追いやすい設計になっています。




既存の流れとの違い


LangChain / LlamaIndexとの比較


LangChainやLlamaIndexはエコシステムが成熟しており、ドキュメントローダーやベクトルストアとの統合が豊富です。一方で、抽象レイヤーが厚く、内部で何が起きているかを把握しにくいという声は根強くあります。


hermes-agentは抽象レイヤーを薄く保つ設計で、LLMへのリクエスト内容やツール呼び出しの結果がコードから直接追いやすい構造です。デバッグのしやすさを優先したい場合や、フレームワークの挙動を細かく制御したい場合には選択肢になります。ただし、その分だけ既製の統合コンポーネントは少なく、自前で実装する範囲が広がります。


AutoGen / CrewAIとの比較


AutoGenやCrewAIもマルチエージェント構成を得意としますが、エージェント間の会話ループが複雑になりやすく、終了条件の設計が難しいという実装上の課題があります。hermes-agentはオーケストレーターが明示的にサブエージェントを呼び出す構造のため、制御フローが追いやすいです。


CrewAIはロール定義がYAMLベースで直感的ですが、カスタムツールの組み込みに一定の制約があります。hermes-agentはツール定義の自由度が高い反面、設計の指針が少ないため、チームで使う場合はコーディング規約を別途決める必要があります。


OpenAI Agents SDK / Anthropic Tool Useとの比較


OpenAI Agents SDKはOpenAIのAPIに最適化されており、Responses APIとの統合が強みです。Anthropic Tool Useは当然Claudeモデルとの相性が良いです。hermes-agentはどちらのAPIも使えるため、モデルの切り替えや比較検証がしやすい点が差分です。本番環境でモデルプロバイダーを固定したくない場合や、コスト・性能のトレードオフを継続的に評価したい場合に有利に働きます。




エージェント実装で詰まりやすい点


ツール呼び出しのエラーハンドリングとfallback


エージェントがツールを呼び出した際、外部APIのタイムアウトや認証エラーが返ってきたとき、LLMがそのエラーメッセージをどう解釈するかは実装次第です。hermes-agentでは、ツールの返り値をそのままLLMのコンテキストに渡す設計のため、エラーレスポンスの内容がLLMの次の推論に影響します。


実装上の注意点として、ツール側でエラーを構造化して返す(例:{"status": "error", "reason": "timeout", "retry": true})ことで、LLMがリトライや代替手段を選びやすくなります。エラーメッセージをそのままスタックトレースで返すと、LLMが混乱して無限ループに入るケースがあるため、fallbackの設計は早めに決めておくことを推奨します。


コンテキスト長とトークン管理


マルチエージェント構成では、オーケストレーターのコンテキストにサブエージェントの結果が蓄積されていきます。タスクが長くなるほどコンテキスト長が膨らみ、レイテンシとコストが増加します。


hermes-agentでは、サブエージェントの出力を要約してオーケストレーターに返す設計パターンが推奨されていますが、要約の品質がタスク全体の精度に直結するため、要約プロンプトの設計は慎重に行う必要があります。本番運用前に、コンテキスト長の上限に近づいたときの挙動を意図的にテストしておくことが重要です。


権限とセキュリティの境界


MCPサーバーを通じて外部ツールを接続する場合、エージェントがどのツールにアクセスできるかの権限管理が重要になります。hermes-agentはツールの定義をエージェントに渡す際にフィルタリングできますが、MCPサーバー側での認証・認可と組み合わせた多層防御が必要です。


特に、社内システムや機密データに触れるツールを接続する場合は、エージェントが意図しない操作を実行しないよう、ツールの副作用(書き込み・削除など)に対してconfirmationステップを挟む設計を検討してください。エージェントの自律性と安全性のバランスは、ユースケースごとに明示的に決める必要があります。


ログと観測性(オブザーバビリティ)


エージェントの挙動をデバッグするには、LLMへのリクエスト・レスポンス、ツール呼び出しの入出力、エージェント間のメッセージをすべてトレースできる状態が必要です。hermes-agentは内部の通信が追いやすい設計とはいえ、本番環境では構造化ログをOpenTelemetry(分散トレーシングの標準仕様)などに流す仕組みを別途用意することを推奨します。


ログに何を残すかは、個人情報や機密情報の扱いとも直結します。ツールの入出力をそのままログに残すと、意図せず機密データが保存されるリスクがあるため、マスキングポリシーを設計段階で決めておくことが重要です。




Spectralの見解


1. 技術的な読み


hermes-agentは「薄い抽象レイヤー」と「MCP対応」の組み合わせが実装上の強みです。LangChainのような多機能フレームワークに疲れたチームや、エージェントの挙動を細かく制御したいチームには試す価値があります。一方で、エコシステムの成熟度はまだ低く、ドキュメントや周辺ツールの整備はこれからです。2026年5月時点では、プロダクション投入よりもPoCや内部ツールでの検証フェーズが適切な位置づけです。


NousResearchのHermesモデルとの組み合わせは、オープンソースモデルを使いたい場合(コスト削減・データをクラウドに出したくない場合)に特に有効です。ただし、Hermesモデルのtool use精度はGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetと比較した定量評価を自社ユースケースで行うことが前提になります。


2. PoCで確認すべき点


PoCで最初に確認すべきは、ツール呼び出しの成功率と失敗時の挙動です。理想的なシナリオでの動作確認だけでなく、ツールがエラーを返したときにエージェントが適切にリカバリーできるかを意図的にテストしてください。次に、コンテキスト長が増加したときのレイテンシとコストの変化を計測し、実運用のトランザクション量に耐えられるかを確認します。MCPサーバーを使う構成では、サーバーの応答速度がエージェント全体のレイテンシに直結するため、ネットワーク構成も含めた計測が必要です。


3. 業務・プロダクト実装に移す時のリスク


最大のリスクはエージェントの非決定性です。同じ入力でも毎回同じ結果が返るとは限らないため、業務フローに組み込む際は人間が確認・承認するステップをどこに置くかを設計段階で決める必要があります。特に、外部システムへの書き込みや金銭的な影響を持つ操作を含むフローでは、エージェントの自律判断に任せる範囲を明示的に制限することを推奨します。


また、hermes-agentはOSSであるため、セキュリティパッチや破壊的変更への対応は自チームの責任になります。依存ライブラリの脆弱性管理と、フレームワーク本体のバージョン追従コストを運用計画に含めてください。




まとめ


hermes-agentは、tool useとMCP対応を軸にしたシンプルな設計のエージェントフレームワークです。抽象レイヤーを薄く保つことでデバッグのしやすさを確保しており、モデルプロバイダーを固定しない柔軟な構成が特徴です。


実装上の詰まりどころは、ツール呼び出しのエラーハンドリング、コンテキスト長の管理、権限設計、ログの観測性の4点に集約されます。これらはhermes-agent固有の問題ではなく、エージェント実装全般に共通する課題ですが、フレームワークの抽象度が低い分だけ自前で設計する範囲が広くなります。


2026年5月時点では、既存の成熟したフレームワークを置き換えるよりも、新規のエージェント実装や内部ツールのPoCで試しながら評価するのが現実的な使い方です。MCP対応の外部ツールをすでに持っている、またはNousResearchのHermesモデルを使いたいという具体的な要件がある場合は、優先的に検証する価値があります。




Spectralでは、hermes-agentを含むエージェントフレームワークの技術調査や、業務システムへの適用可能性の検証を支援しています。PoC設計から実装・評価まで、ご相談はお気軽にどうぞ。


関連論点として Agents need control flow, not more prompts もあわせて読むと、この技術動向の背景を追いやすくなります。


Spectralでは、技術調査からPoC設計、プロダクト実装まで支援しています。実現性の確認や事業活用の相談は サービス詳細お問い合わせ をご覧ください。

森島拓生のプロフィール写真

森島拓生

Spectral 代表 / AI導入・エージェント設計

Spectral代表。AI Development & Consultingを軸に、非エンジニアとの対話から要件定義を構造化する「上流工程AI」や、AIエージェントによる業務自動化の設計・検証に取り組む。技術を導入して終わらせず、現場で継続して使える運用設計までを重視している。

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