AIが書いたコードの90%は、誰にも見られていない——その意味を、一緒に考えてみましょう
1. イントロダクション
最近、AIを使ってコードを書く人がとても増えています。特に「Claude(クロード)」というAIアシスタントは、プログラマーの間で広く使われるようになりました。
ところが最近、あるデータが静かに注目を集めています。Claudeが関与して生成されたコードの約90%が、GitHubという場所に公開されているにもかかわらず、「スター数2未満」のリポジトリに集まっているというのです。
「スター数って何?」「それの何が問題なの?」と思った方、安心してください。この記事では、その言葉の意味からていねいに解説しながら、このデータが示していることを一緒に読み解いていきます。
AIを使ってコードを書くことが当たり前になりつつある今、このトレンドは私たちに何を教えてくれるのでしょうか。技術的な知識がなくても理解できるよう、順を追って説明していきます。
2. 基礎知識・用語解説
まず、この記事を読むうえで必要な言葉をいくつか説明します。
GitHubとは?
GitHub(ギットハブ)は、プログラマーが書いたコード(プログラムの設計図のようなもの)を保存・公開・共有できるウェブサービスです。世界中の開発者が利用しており、「コードのSNS」とよく例えられます。個人の趣味のプロジェクトから、大企業が使う本格的なソフトウェアまで、さまざまなコードがここに置かれています。
リポジトリとは?
リポジトリ(repository)とは、GitHubの中でひとつのプロジェクトが収められた「フォルダ」のようなものです。「レポ」と略されることもあります。たとえば、あなたが家計簿アプリを作ったとしたら、そのアプリに関するすべてのコードをひとつのリポジトリにまとめて管理します。
スター数とは?
GitHubには、気に入ったリポジトリに「⭐スター」をつける機能があります。これはSNSの「いいね」に似た仕組みで、スター数が多いほど、多くの人に注目・評価されているプロジェクトだということを示します。スター数が2未満、つまり0か1しかついていないリポジトリは、ほぼ誰にも見られていない、あるいは作った本人しか知らない状態です。
Claudeとは?
Claude(クロード)は、Anthropic(アンソロピック)という会社が開発したAIアシスタントです。文章を書いたり、質問に答えたりするだけでなく、プログラムのコードを書く能力にも優れており、開発者の間で広く使われています。
「Claude-linked output」とは?
これは「Claudeが関与して生成されたアウトプット(成果物)」という意味です。具体的には、Claudeを使って書かれたコードや、Claudeが補助して作られたプロジェクトのことを指します。
3. トレンド分析
このデータは、Hacker NewsやRedditといった技術者が集まるコミュニティで静かに話題になっています。「Claudeが関与したコードの90%が、スター数2未満のリポジトリに存在する」という事実は、一見するとシンプルな数字ですが、掘り下げると複数の読み方ができます。
まず、数字の背景を整理しましょう
GitHubには現在、数億件のリポジトリが存在しています。そのうちスター数が多いプロジェクトはごく一部で、実際にはGitHubに公開されているリポジトリの大多数がスター数ゼロというのが現実です。つまり、「スター数2未満が多い」という状況は、AI生成コードに限った話ではなく、GitHub全体の傾向でもあります。
しかしそれでも、この90%という数字が注目される理由があります。
AIコードの「使い捨て」化という現象
技術者コミュニティでの議論を見ると、多くの人が指摘しているのは「AIによってコードを書くハードルが下がりすぎた結果、使い捨てのコードが大量生産されている」という点です。
以前は、コードをゼロから書くには相応の時間と知識が必要でした。そのため、GitHubに公開するプロジェクトには、ある程度の「意図」や「継続性」が伴っていました。ところがAIを使えば、数分で動くコードが生成できます。その結果、「とりあえず作ってみた」「試しに動かしてみた」という一時的なプロジェクトが急増しているのです。
「見えないコード」の増加
もうひとつの視点は、コードの「可視性」が低下しているという問題です。スター数が少ないということは、そのコードが他の人に参照されたり、改善されたりする機会がほとんどないことを意味します。
オープンソース(誰でも見られる・使えるコード)の文化は、「多くの目でコードを見ることで品質が上がる」という考え方を基盤にしています。しかしAIで大量生成されたコードの多くは、その恩恵を受けることなく、誰にも見られないまま存在し続けます。
開発者の行動変化
Redditの開発者コミュニティでは、「Claudeを使って個人的なツールを量産しているが、公開するつもりはない」という声も多く見られます。これは悪いことではありませんが、AIが「個人最適化されたコード生産機」として使われているという傾向を示しています。
かつてのプログラミングは、コミュニティへの貢献や知識の共有という側面が強くありました。AIの登場によって、その文化が少しずつ変化しているのかもしれません。
4. Spectralの見解
私たちSpectralは、企業へのAI導入を支援する立場から、このトレンドをどう見ているのかをお伝えします。
「量」が増えることは、必ずしも「質」の向上を意味しない
AIツールの普及によって、コードを書ける人の数は確実に増えています。これは素晴らしいことです。しかし、生産されるコードの量が増えることと、そのコードが実際に価値を生み出すことは、別の話です。
スター数2未満のリポジトリが90%を占めるというデータは、「AIで作られたコードの多くが、広く活用されていない」という現実を示しています。これは、AIを活用する際に私たちが意識すべき重要なポイントです。
「作ること」と「届けること」は違う
企業でAI導入を進める際、私たちがよく目にするのは「AIを使えば何でも作れる」という期待感です。確かに、AIはコードや文章を素早く生成できます。しかし、作ったものが実際に使われるかどうかは、また別の問題です。
GitHubのスター数は、ある意味で「社会的な検証」の指標です。誰かがそのコードを見て、「これは使える」「これは面白い」と思ったときにスターがつきます。スターがつかないということは、その検証のプロセスを経ていないということでもあります。
AIは「出発点」であって「終着点」ではない
私たちがお客様に常にお伝えしていることがあります。それは、AIが生成したアウトプットは、あくまでもスタートラインだということです。
Claudeが書いたコードは、確かに動くかもしれません。しかし、それが本当に価値あるものになるためには、人間の目による確認、文脈への適合、継続的な改善が必要です。90%のコードが「誰にも見られていない」状態にあるとすれば、それはAIの限界というよりも、AIを使う側のプロセス設計の問題かもしれません。
このデータは、AI活用の「次のステップ」を考えるきっかけとして、とても示唆に富んでいると私たちは考えています。
5. 実践的アプローチ
では、このトレンドを踏まえて、私たちは実際にどう行動すればよいのでしょうか。AIを使ってコードを書く方も、企業でAI導入を検討している方も、参考にしていただける考え方をご紹介します。
① 「なぜ作るのか」を先に決める
AIを使うと、アイデアをすぐにコードに変換できます。しかしその前に、「このコードは何のために作るのか」「誰が使うのか」を明確にする習慣をつけることが大切です。
目的が曖昧なまま作り始めると、動くけれど使われないコードが生まれやすくなります。「試しに作ってみる」こと自体は学習として価値がありますが、業務や本番環境で使うものについては、目的の明確化を最初のステップにしましょう。
② 「公開する前提」で作ると品質が変わる
スター数が少ないリポジトリの多くは、「とりあえず動けばいい」という姿勢で作られたものが多いと言われています。一方で、「他の人が見ても理解できるか」「説明を書けるか」という視点を持つと、コードの質は自然と上がります。
実際に公開するかどうかは別として、「公開できるレベルのものを作る」という意識を持つだけで、AIとの協働の質が変わってきます。
③ AIが生成したコードを「そのまま使わない」
ClaudeをはじめとするAIは、非常に流暢なコードを書きます。しかし、生成されたコードを一字一句確認せずに使うことはリスクがあります。特に業務で使う場合は、以下の点を必ず確認しましょう。
- コードが意図した通りに動くか(テストする)
- セキュリティ上の問題がないか
- 自分(またはチーム)が内容を理解できているか
「AIが書いたから大丈夫」ではなく、AIはあくまでも「下書きを書いてくれるアシスタント」として位置づけることが重要です。
④ 小さく作って、フィードバックを得る
大きなプロジェクトをAIで一気に作ろうとするより、小さな機能を作って、実際に使ってみて、改善するサイクルを回すほうが、結果的に価値あるものが生まれやすいです。
スター数が多いプロジェクトの多くは、最初から完璧だったわけではありません。小さく始めて、使った人の声を聞きながら育てていったものがほとんどです。AIはそのサイクルを速めるツールとして使うのが、賢い活用法と言えます。
⑤ 企業でAIを導入する場合の注意点
企業の立場からは、**「AIで何でも作れる」という期待値の管

Author
森島拓生
Spectral 代表 / AI導入・エージェント設計
Spectral代表。AI Development & Consultingを軸に、非エンジニアとの対話から要件定義を構造化する「上流工程AI」や、AIエージェントによる業務自動化の設計・検証に取り組む。技術を導入して終わらせず、現場で継続して使える運用設計までを重視している。
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